引き篭り魔法使いが術を失敗して、巻き込まれてしまいました。

  

9.魔法がない世界の住人と、引き篭り魔法使いの事情3


  鼻の先が触れそうなほど、近くにいる師匠。けれど、頬に手を添えても、いつも安心をくれるぬくもりは感じられないです。
 予想出来ていたとはいえ、目の奥が熱くなっていくのを止められません。
 自己満足だとはわかっていますが、諦め悪く師匠の頬を撫で続けてしまいます。今、目の前で起きているのは過去の出来事で、ここは私の意識の中。
 ですが、辛そうに押し黙っている師匠の前では、そんな事実も関係ありません。

――嗅覚や空気の温度は再現出来ても、ヒトの体温までは難しくて――

 カローラさんは、落ち着けと言わんばかりに、手の甲へ光の粒を落としてきました。ちょっとだけ、ちくっと静電気ほどの痛みを感じました。
 ようやく師匠から離れます。未練たらしく、しばらく指の先で触れていましたけれど。師匠に見えていたなら、きっと、苦笑いで手を掴まれていたでしょうね。
 師匠とセンさんは、互いに沈黙を保ったままです。
 
「私、聞いていい会話ないかも」

 緊迫した空気の中、ふと思い出したのは、吹雪の夜に聞いた言葉でした。師匠は、近いうちに色々話さなきゃいけないことがあると言っていました。直感でしかありませんが、水晶に囲まれた空間でのやり取りは、それに関係があると思えたんです。
 そう葛藤してもみましたが、やっぱり耳を塞ぐ気にはなりません。ダメだって思っているのに、気づかいない振りをして聞き耳を立てるなんて、最低です。でも、最低でも良いから、師匠に近づきたい。そんなずるい自分を諌(いさ)められません。

――アニムには聞いて欲しいの。見て欲しいの――

 カローラさんの声は、相変わらず淡々としていました。けれど、感情が薄く聞こえる言葉の裏に、懇願の意が垣間見えた気がしました。

「思い出美化とか、ししょー引き篭ってる理由、気になる。でも、一番知りたいは、ししょー悲しませてる、原因」

 私、ずるいなぁ。カローラさんの言葉に気が緩んだのか、本音が漏れてしまいます。
 師匠とセンさんの会話の内容は、すごく気になります。
 師匠は私にとって、大切な人でもあり、好きな人でもあるんです。そんな師匠のこと、知りたくないはずがありません。
 特に、師匠ってば二百六十才なんですもん。私の世界の寿命なら、二・三回人生繰り返せそうですよね。
 
「私、たった一年しか、一緒にいない。私といるししょーしか、知らない。ぽつぽつしか、聞いたことない」
――共に生きる歳月も重要だけれど、アニムしか見たことのない『あの子』だっているのではないかしら――

 私だけの師匠なんて、いるんでしょうか。
 私が初弟子だから、弟子を育てる師匠はだれも知らないかもしれません。そう思ってすぐ、頭を振りました。弟子自体は初めてかもしれませんが、グラビスさんみたいに師匠を慕って弟子入りに近い位置にいた人だって、多いはずです。
 おはようやおやすみのキスだって、恋仲の人にはしていただろうし。

「って! 自分で考えて落ち込む! 世話ない! 恋人とか、想像する、絶望的に崖っぷち! っていうか、そんなキスじゃない!」

 青ざめたのか真っ赤になったのか。自分でもわかりません。でも、叫びに近い声が煩かったのと、意味不明な言葉が出たのは自覚があります。
 カローラさんが、すいっと離れていきました。怯えさせてごめんなさいです。
 深呼吸を繰り返すと、すぐに心音が戻りました。冷たい空気が、体温を下げてくれます。さすが意識の中です。

「辛うじて、髪長い師匠は、ちょっとだけ、知ってる」

 私が召喚されてから数日ですが、師匠は長髪だったんですよね。水晶の光を吸い込んだレモンシフォン色の髪は、とても綺麗でした。乙女フィルターなしでも、実際、きらきらと輝きを纏っていました。師匠が本や魔法使い新聞を呼んでいる隙を狙って、弄っていた覚えがあります。
 けれど、ある朝、師匠の髪がばっさり切られてしまっていたんです。
 私に触られるのがよほど嫌だったのかと、激しく落ち込んでしまいましたよ。召喚された当初から、師匠は優しかったんですもん。まぁ、お決まり的に意地悪もありましたが、悪意は全く感じられませんでしたしね。
 スキンシップの好きな私だって、「やめてくれ」と言い漏らされれば、素直に従います。だから、余計にショックでした。
 それを置いても、期限がわからないとは言え、しばらくはお世話になる方だとは思っていましたから、仲良くはしたいと思っていましたし。
 今となっては、懐かしい思い出です。振り返ると、頬が緩んでしまいます。
 何故かと言うと。師匠って、自分からはあまり触れてこなかった癖に、私が一歩下がったら敏感に反応してきたんですよ。そして、ぶすりとしながらも目元を染めて「お前が短い方が似合いそうだって言ったんだろうが。それに、こっちのが楽だしな」って零したんです。
 確かに、呟きました。長い髪もお似合いでしたが、短い方が表情や綺麗な瞳が良く見えるかなと思ったんです。まさか自分の呟きが影響してだなんて、考えてもみませんでした。

「髪短いししょーって、可愛いかも思った。思わず口にしてた。ししょー、口歪めて変顔してた。けど、耳赤かった」
――外見年齢は十八才ほどだものね。幼い顔立ちの割に、髪が長いと迫力があると、『あの子』の親友が言っていたのを知っているわ――

 ギャップ萌えというやつでしょうかね、なんて。思い返せば、その時はアホなこと考えていた覚えがあります。ついでに「奇妙な目つきで見るな」と後ろに下がられたのも、思い出してしまいました。最初から、失礼発言ばっかりだったかも。
 目の前の師匠をじっと見ていると、センさんから大きな溜息が落ちました。降参と言わんばかりに、両手を掲げています。センさんがすると様になっていますが、結構面白いジェスチャーですよね。お笑い的に。

『まったく。闇の深淵を垣間見た黒い魔術師、始祖の忘れ形見、魂狩りの執行者。あとは、どんな呼称があったかな。そうそう、金色と闇色の羽をあわせ持つ天使、だっけ?』
『セン……嫌がらせか。無駄口叩くな』
『まぁまぁ。様々に呼ばれ恐れられる大魔法使いも、普通の男だということかな、って』

 なんですか、その二つ名。私、教えてもらったことないですよ。
 ごめんなさい。普段の師匠を知っている私は、お腹を抱えて笑っちゃうんですけど。師匠の魔法がとてつもないモノだというのは、アラケルさんとの対戦で目の当たりにしましたから、充分理解しています。わかってはいるんですけど……。

「所々、中二病臭い、っていうか、壮大すぎて」

 お腹痛い。特に最後。どういうこと。羽が生えて飛んでいる天使様な師匠、想像するだけで呼吸困難です。現実世界の私、絶対に、寝ながら笑い声をあげていますね。
 この世界で最上の讃賞なら、私だって爆笑しません。うん、自信は全くないですが。でも、センさんも、二つ名を言いながら噴出しています。それに、師匠から思い切り目を逸らし、肩を震わせているんです。師匠も「けっ!」とそっぽを向いてしまいました。

『そもそも、ウィータ自身の言葉を額面通り取るなら、君が臆病になる理由なんて、ないのにさ』

 息を整えたセンさんが、肩を竦めました。気づかない振りというよりは、全てを知った上で軽い態度を取っているように思えました。
 元の世界での友人である千沙(ちさ)が失恋した時、色々濃い恋愛をしていた亜希(あき)目に浮かんでいた色に、良く似ています。
 胸がざわつきました。大声で問いかけたいのを必死で堪えます。
 動揺する私を余所に、センさんは大きな溜息を落とし、瞳の色を変えました。冗談を言いながらも、体は疲れているのでしょう。大きな手でこめかみをぎゅっと押しました。

『僕だって、悪戯にウィータの気持ちを揺さぶっている訳ではないんだよ? 今回の依頼、現実的な問題があるんだ』
『んだよ』
 
 自分が的から外れた途端、間髪入れずに反応したのが師匠らしいです。師匠、センさんやホーラさんにはめっぽう弱いんですけど、自分が関係ない部分には強く出ますよね。
 過去のセンさんも私と同じ心情みたいです。苦笑を浮かべました。

『いくら大きな術が失敗した反動とはいえ、契約執行途中にさらなる異世界に、魔獣が転移してしまった。それくらい、次元の境界が薄れているという点だよ。境界が薄れているというのは、つまり、次元を越える法則が崩れかかるという意味にも繋がるからね』

 センさんの言葉には含みを感じました。師匠は含まれている意味を読み取っているのでしょう。眠そうな半目が、大きく見開きました。
 次元を越える法則。カローラさんが説明してくれたやつですね。普通の生物は、生身の肉体では次元越えは耐えられないとか、時折魂は次元や世界を行き交うっていう。それが崩れると、どんな問題が起きるのかな。

「法則ひっくり返すと、生身の生物も次元超えちゃうとか、魂行き交わなくなるとか? そんな単純、ないか」

 カローラさんに問いかけるように見上げますが、返事はありません。ゆらゆらと、淡い光を纏ったまま揺れているだけです。

『……何十年に一回かは、魔法の性質が近い世界や相性が良い次元が近づいた時、ある意味タイミング良くアホやらかす召喚師はいる。境界が薄れているとは、限らねぇだろ』

 センさんの言葉を否定した師匠。
 沈黙の後。師匠は瞼を閉じて、魔法杖に額を乗せました。込み上げてくる期待を、必死で払拭(ふっしょく)しているみたい。
 さっき師匠が瞳を大きくした様子は、幼かった雪夜や華菜を彷彿(ほうふつ)とさせました。暴れる弟と妹に大人しくなってもらうためにご褒美をちらつかせたり、おねだりを聞いてあげたりした時に向けてきた表情を連想させたんですもん。
 私が深読みしすぎでしょうか。
 センさんは困ったように笑います。駄々っ子を見守る瞳です。
 
『んだよ。言いたいことはわかってるぜ? 何回も言うように、『あの時』、術を失敗したのはオレじゃねぇ。オレは絶対間抜けやらかさねぇよ』

 師匠の眉間に皺が寄りました。口をへの字に歪めています。私が知っている師匠の顔です。ぷいっと視線を逸らした顔は幼く、どこか拗ねている感じです。
 てっきりセンさんは噴き出すかと思ったのですが、静かに苦笑を浮かべただけでした。意外です。

『僕にはウィータの『失敗』定義がわからないなぁ。まぁ。本人絡みの術ではなく、周囲に対するケアって意味なのかな?』
『……わかってるなら、いちいち口にするな』
『ほら、手に入れる気は、満々だ。ただ、取り巻く条件を変えたいだけなのだろう? でも、それって容易じゃないし、逆に反動が怖いけれど』

 後半部分は、どこか咎めを含んだ口ぶりでした。センさんの薄桜色の瞳も、細められています。

『うっせぇ。オレが成功させるって宣言したら、成功するんだよ』

 師匠は、自信に満ちた声で言い放ちました。
 私には状況把握出来ませんけど、師匠が宣言するなら間違いないと、訳もわからず頷いてしまいました。
 ふと、視界に入ってきたのは、大小様々な魔法陣たち。師匠たちの足元にある大きな魔法陣では、文字をなぞっている光が波打っています。周囲の小さな魔法陣は、静かに色を流しています。グラデーションみたいで、見惚れてしまいます。

「あれ? でも、ここ、私召喚されて落ちてきた場所。なら、私、術の失敗、巻き込まれたから、ししょー、失敗するってこと?」

 思わず首を傾げてしまいました。
 カローラさんは、召喚前後の出来事を私に見て欲しい、思い出して欲しいと言いました。ということは、水晶の空間いっぱいに展開されている魔法陣――つまり術も、私に関わるモノと捉えていいんですよね?
 頭上では、一際巨大な魔法陣が風を起こしています。
 猿も木から落ちる、なんて言ったら師匠怒りそうです。弘法も筆の誤りってやつですか。 混乱を落ち着かせるために、無意味なことを考えてみます。

『教えてくれないだろうけれど、念のため聞くよ。執着している真意』
『無駄だって理解してるなら、黙ってろよ。それに、お前が期待してることは、ねぇよ。オレはオレ自身の後始末をつけたいだけだし、『あの時』聞いたみたいな生活送るのも、おもしれぇかもなって、興味があるだけだ』

 掴みどころのない会話ですが、一つだけ意外な部分がありました。師匠が意地を張るって、珍しいなぁって。
 最初の頃、私の面倒を見るのは暇つぶしだと言われたことがありましたし、私に木登りさせたり花畑に連れていって花冠作ってくれたりしましたしね。暇つぶしは、本当なんでしょう。
 だけど、人一倍意地っ張りだとは思ったことなかったです。

『まぁね。『あれ』は、確かに印象強い事柄ではあったよ? けれど、ウィータや僕たちの生からしたら、ほんのわずかな時間を共有したに過ぎない『あの人』に、その執着ぶり。当時のラスターならともかくさ。本当は、僕たちが見えてない時に、ウィータが心を掴まれたきっかけがあったんだろう? それとも、別れの前から? いい加減、親友の僕にくらい、聞かせてよ』

 センさんは早口にまくし立てながら、師匠の肩に腕を置きました。顔には、センさんらしくない、にやりとした意地悪な笑顔が浮かんでいます。

『あー! うっせぇ、うっせぇ! 集中力欠けるだろうが! お前は噂好きの長老ばばぁ共か!! 何百回も繰り返したが、好奇心と意地と暇つぶしだっつーの!』

 あっ、師匠が切れました。力いっぱいセンさんの頭を押していますが、びくりともしません。体格差でしょうか。師匠はもやしっこではありません。けれど、センさんは師匠以上に体格もしっかりしていて、身長も高いです。
 そうじゃなくて。たった一言、投下された爆弾。意識した途端、ひゅっと喉を逆流してきた酸素で、むせてしまいました。

「げほっ。ししょー執着しているは……ヒト?」

 知りたかったことなのに、急すぎて頭がついていきません。入ってきた単語を、無理矢理頭から追い出します。
 師匠は魔法杖をセンさんに向かって突き出しました。でも、センさんは颯爽と距離を取っていたので、からぶってしまいます。師匠、届かなかったのが、めちゃくちゃ悔しかったみたいです。早足で逃げるセンさんを、魔法杖を振り回しながら追っています。
 魔法陣を縁取り笑顔で逃げるセンさんと、顔を真っ赤にして唸りながら追いかける師匠。
 どうやら魔法陣からは出られないようですね。って、違う。お二人とも、とんでもなく滑稽(こっけい)ですよ。コメディですよ。さっきまでのシリアスは、風に吹かれて消えてしまいました。そんな、息を切らさなくても。

『ふーん。ウィータは自分の好奇心と意地だけで、他人の人生を狂わせるんだ?』
『っ! そんなんじゃねぇ! オレはっ――!』

 師匠は叫んだあと、はっとした表情で口を覆いました。反響していく否定の声が、水晶の洞窟を揺らします。師匠は眉間に皺を寄せて立ち竦んでいます。頬は血の気が引き、真っ青です。生まれては消えていく白い息が、師匠の乱れた心を映しているようでした。
 センさんは苦笑いを浮かべ、師匠へと歩み寄っていきます。

『ごめん、ごめん。わかってるよ。ウィータが百年の時を超えて、壮大なやきもちを妬いているのはね。しかも、相手は――』
『うっせぇ! そんなんじゃねぇーよ! 誇りの問題だ!』

 あっ、師匠が真っ赤に染まりました。良かった。それにしても、耳が痛いです。
 師匠は歯を食いしばって、センさんを睨んでますが、全く迫力はありません。
 っていうか、やきもちって?! どういう意味でしょうか。だれがだれに、何で。会話と状況についていけない。
 私の声が師匠とセンさんに届くなら、ちゃんと主語をつけて話しなさいと言いたいです。でも――

「ししょーとセンさん、意識して主語つけないよう、してるみたい」

 さっきから感じていた違和感です。具体性のない内容も、はじめこそ、以心伝心なお二人ゆえに、無駄を省いて話をしているのだと思っていました。でも、会話を聞いているうちに、以前ホーラさんがおっしゃっていた言葉を思い出したんです。
 師匠やラスターさんは言霊に縛られている、という意味合いの言葉。
 だれかの名前も、具体的な出来事も、思いも。全部、意識して口にしない。そう気をつけなければいけないくらい、強い感情が伴ったモノなんでしょうか。
 私の中で、黒い感情が渦巻いてくのがわかります。

「こんな感情、嫌だ」

 ぎゅっと胸元を掴みました。心を翳らせていく暗い気持ちを振り払いたくて、深く息を吐き出しました。それでも、私の中で渦巻く、醜い嫉妬は大きくなるばかりでした。
 そんな私の耳に、センさんの軽い調子の声が入ってきます。

『大いなる時の意思に従うなら、失敗しないといけないと思うけれど……でも、ほら、失敗の裏側にも色々意味はあるだろうしね。僕らだって、失敗の『真意』を聞いたわけじゃないよ?』

 センさんの右手で、魔力がうごめいています。練り上げられた魔力は一気に大きさを増し、立体映像を作り出しました。テレビで見た、宇宙空間です。たくさんの光やガスの塊が漂っています。それは垂直や平行に、何層にも重なり合っています。
 立体プラネタリウムみたい。引き込まれそうに綺麗です。

『本題に戻るけれど。ウィータが蓄えている魔力を借りたかったのは依頼した理由の一つでもあるのだけど……今回ばかりは、少し事情が違うんだよ』

 センさんは口元を引き締めています。薄い桜色の瞳は、真剣さしか感じられません。周囲の空気が緊迫したモノに変わった気がしました。
 師匠はすっかり平常心を取り戻していて、元のポジションに戻っています。これといってセンさんの様子を気にした訳でもなく、目にかかっている前髪を気怠そうに払っただけでした。

『あ?』
『ウィータを訪ねる前に、僕だってちゃんと下調べはしてきたんだよ? まぁ、ウィータが魔力の制御に苦戦していることから、可能性は考えているかもしれないけれど。ホーラにも少しだけ助力してもらったし、ラスターやディーバそれに昔の仲間何人かにも手伝ってもらった結果、どうやら――』

 センさん、まわりくどい言い方です。わざと、結論に辿り着くのを遅らせているみたい。
 センさんが師匠の肩に手を置いた瞬間、魔法映像の一つが魔法陣を生み出しました。映像の前に現れた魔法陣は、緊急信号のように点滅を繰り返しています。耳に痛い高音が鳴り響きます。
 すっと、花びらが一枚、魔法陣に吸い込まれていきました。師匠の口の端が、わずかにですが上がりました。

『見つけたか!』

 師匠が魔法杖を高々と掲げると、頭上で回転していた大きな魔法陣が風を起こしました。一斉に魔法映像が消えていき、花びらが消えていった魔法映像だけが大きくなりました。
 水晶に囲まれた青い世界に、鮮やかな紅の森が映し出されます。映画館のスクリーン程にまで広がった映像の下には、師匠の背丈くらいの立体映像が浮かび上がりました。
 魔法映像いっぱいに映った光景。それは、つい先程まで見ていた――私とカローラさんがいた場所でした。




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