引き篭り魔法使いが術を失敗して、巻き込まれてしまいました。

番外編
バレンタイン!
無駄に長いです。いちゃついてるだけの師弟です。

引き篭り師弟と、あまいチョコ菓子。―前編―

「あにみゅ、今日はおやつ作るのぞ?」

 朝ご飯や洗濯など一通りの片づけを終え、振り返りノートに向き合っていると。お出掛け準備を終えたフィーニスが、瞳をらんらんに輝かせて近づいてきました。
 お出掛け準備と言っても、飴玉ひとつが入るような横かけカバンだけ。結界内には果物や花びらの滝など、地域によっては食べ物が豊富ですけれど、全くといって良いほど食料がない地域もあるんです。最近、前よりも飛行力があがったフィーニスとフィーネ。好奇心旺盛なのも手伝って冒険する二人が迷子になった時用にと、あらかじめ師匠の魔力入りの飴玉をひとつ持たせるようにしています。
 おやつの内容によっては、二人とも探索を近場で済ませることもあるのです。そんなわけで、今日は飴玉必要ないかもです。

「なーんと! 今日は、フィーニスも大好きな、チョコレートを、使いまして――」
「ちょこなのぞ?!」

 垂れ耳をぴんと立てたフィーニスが、前足を打ち合わせて、大きな瞳を蕩けさせてくれました。可愛い! もう、この反応だけで、もりもり一か月分のストックを作りそうになっちゃうから危険です! あるだけ食べちゃいますからね! 私もフィーニスたちも。
 二人はともかく、私の体重的には大問題です。とほほ。
 期待に胸膨らませたフィーニスが、にゃにかなーと、そわそわテーブルの上を二足歩行で歩き回っています。時々、ちらちらと向けられる視線が! 可愛すぎて、つらい!
 あまりじらしても可哀想ですね。レシピをぺらぺらとめくり、あるページで手を止めます。

「じゃーん! ガトーショコラ、でーす!」
「うにゃなー!! ふぃーにす、お手伝いするのぞ!」
「やーん! せっかく晴れてましゅのにー! いっちょにお散歩行くって約束したでちょ!」

 前足を宙で躍らせたフィーニスに、後ろから突撃してきたフィーネ。ぶつかられたフィーニスは、一瞬、白目をむいちゃいました。背中に頭突きされて、物凄く痛そうでしたよ。
 前のめりに倒れているフィーニスの上で、フィーネはばたばた泳いでいます。
 どっどっちも可愛いですが。ひとまず、二人を引き剥がして、座らせました。

「フィーニス、ありがと。でも、大丈夫だから、フィーネとお散歩しておいで? 今日は珍しく、雨が降る気配も、ないし」
「しょーじゃけど……」
「それに、今日のチョコは特別、だから、ね?」

 そうなんです。今日はバレンタイン仕様で、ハート型のガトーショコラを作ろうかなって企んでます。
 水晶の森は年がら年中寒いですし、去年は思い出すどころじゃなかったですからね。今年は、師匠への恋心も自覚したことですし! ひっそりこっそり、バレンタインのつもりで出します。いちから説明すると、師匠は絶対恥ずかしいこと言わせようとするでしょうから内緒です。
 にっこり二人の頭を撫でると。フィーニスは渋々と言う調子で頷いてくれました。フィーネからは、甘い鳴き声があがりました。

「わかったのぞ。ふぃーね、ごめんなのじゃ。いくじょ!」
「あい! あにむちゃ、おやちゅには戻ってきましゅ! かえっちゃら、フィーネ、お手伝いしましゅの!」
「うん。いっぱい遊んで、お腹すかせて、帰っておいで」

 手渡された二つのカバンは、明日まで出番保留ですね。
 ひらひらと手を振ると、二人は手を繋いできゃっきゃと飛んでいきました。ぷりっとしたお尻にほくほくなっちゃいます。って、これじゃ変態さんですね。
 さて、私も調理場に移動しましょうか。師匠は地下に行っているので、お昼までは戻ってこない予定です。お昼の前に、焼く準備まではしちゃいましょう。

「ルシオラには、手紙で、報告しようっと」

 私がバレンタインを思い出したきっかけは、ルシオラからの手紙でした。ルシオラが住んでいる地域にも、バレンタインに似たイベントがあるらしいんですよね。女性じゃなくって、男性から告白するイベントみたいですけれど。
 で、ルシオラは気になってた薬師さんから『小さな恋心』っていう花言葉のお花を貰ったらしいんですよ! ルシオラは「微妙じゃん?」って書いてましたけど、文面からはとっても嬉しかったのが伝わってきました。

「いいなぁ。ルシオラ、お花の贈り物。そういえば、私、恋の意味で、男性から、貰ったの、ないかも」

 雪夜やお父さんから、それにフィーニスからは貰ったことありますけれど。最近だと、ルシオラの手紙と一緒に送られたラスターさんからのお花かな。ラスターさんから一言、「いつも美味しい料理をありがとう」とハートマークつきで頂いたので、調理場に飾っています。香りも強くない淡い菫色《すみれいろ》の花は、さりげなく調理場を色づけてくれています。

「お花は、可愛いよね。ほわほわ、ですよ」

 私はさほどまねではないので、自分から花壇を整えるタチではありません。でも、この家のお花が耐えません。でも、我が家が花で溢れるのは、フィーニスとフィーネが摘んできてくれるから。
 寒い水晶の森に、南の花畑のお花が溢れてるというのも不思議な光景ですが、いつも癒しを貰ってます。

「水晶の森なのに、植物あるは、二人のおかげだね」

 もちろん、ウーヌスさんにも感謝しています。前に生の植物は優しいと思うのと零してから、何かと整えてくれるんですもん。
 そんな中、師匠は花束くれるような性格でもないです。うん。だれよりも鈍そう。というか、花を贈るという習慣自体なさそう。

「今度、一緒に、南の森行ったら、ししょーに、摘んでもらう、お願いして、押し花にしよ!」

 沸いたお湯をボウルに移し、湯銭でチョコとバターを混ぜます。
 無理矢理摘ませたお花を貰った気になるのは、少々空しい気もします。いやいや、気にしない! 掻き混ぜる速さがとんでもなくなったのは、ご愛嬌。
 卵白と塩を少々入れて、さらに泡立てます。お菓子作りの作業していると、ハンドミキサーがあればなって思いますね。なんの。この手間が愛情と信じて頑張る。
 筋肉痛になりそうな腕を叱咤して、お砂糖を加えましょう。恋と同じですね。砂糖の甘さだけじゃなくって、お塩のスパイスがあるから、より甘さを感じられる。ちょいちょい。

「ししょーに、私の想い、ちょこっとでも、甘い、思ってもらえます、ように」

 今日は一層の願いを込めて、お菓子を作りましょう。ダメですね。師匠が大好きって気持ちを練りこもうとするほど、頬が緩んでいきます。こんな状況、だれにも見られてはいけない。フィーニスがいたら、確実に「気持ち悪いのぞ、あにみゅ」と半目を向けられていたことでしょう。
 気を取り直し、別のボウルを取り出します。卵白とお砂糖を入れて、またひたすら混ぜます。こんな気持ちでお菓子を作るのは、初めてかもしれません。いえね。私だって、可愛らしいレベルの初恋はしたし、友達の付き合いでバレンタインチョコを作ったりもしました。けど。けれど、この人にだけ食べて欲しいって気持ちを詰め込んだのは初めてなんですもん。

「私、ししょーで、初めてばっかり。でも、ししょーは、私、初めて、あるのかな」

 師匠が二百六十年生きてきたのは承知しています。しかも、想像の範囲でも、相当もてただろうなぁというのは、わかります。大魔法使いだし、凶悪だったり若干屈折している性格は別にして、容姿だって整っているし。あっ。私は、師匠の全部が好きですけどね。
 ふと、メレンゲとクリームを混ぜる手がとまりました。
 私は初めてばかりで浮かれているけれど。もしかして、師匠にとっては、面倒臭かったりするのでしょうか。私が師匠の初めてを欲しいなって思うのも、負担なのかな。
 ぼんやりとしているうちに下準備が終わってしまいました。まだ、焼くには早いでしょうね。お茶でも飲もうかとお湯に火をかけ、作業台前に腰掛けます。
 飾ってある花を何の気なしに突くと、可愛い花びらがぴこっと跳ねました。

「今日のお菓子の準備かな?」
「はい。センさんは、もう魔法道具修理、終わったです?」

 壁から顔を覗かせたのはセンさんでした。センさん、師匠とは違う場所で作業をしたらっしゃったはずです。お昼すぎになるとおっしゃっていたのに、早く終わられたのでしょうかね。
 首を傾げると、にこっと微笑まれました。センさんはスマートな調子で、私の前に座ります。おっと、見とれてしまいましたよ。喉が渇かれたのでしょうかね。

「飲物が切れてしまったので、気分転換がてら休憩にあがってきたんだ」
「エルバのお茶で、大丈夫ですか? この間、ラスターさんから貰った、エルバ、美味しかったですよ。ポットごと、持っていきます?」
「ありがとう。ここでアニムと一緒に頂くよ。それにしても、ラスターも、まめだなぁ」

 エルバのお茶は、いわゆるハーブティーですね。とぽとぽと、ガラスのポットにお湯を入れる私を見て、なぜだか、センさんは喉を震わせています。私の淹れ方、おかしいですかね。でも、師匠に教えてもらった方法なので、大丈夫なはずです。うん。
 砂時計の砂が落ち綺麗に色が出たところで、センさんに差し出します。
 センさんてば、飲み方も優雅です。しかも、「アニムが淹れてくれると、一段と美味しいね」と微笑みかけてくれるのも忘れないのが、にくいですね。よっ! 色男! と呼びかけたくなります。

「これディーバが好きそうだなぁ」
「もらい物ですけど、よかったら、少し、持って帰ります、です?」
「じゃあ、遠慮なくお願いしようかな。でもいいのかい? ラスターは何も言わないだろうけれど、ウィータもこの味、好きだろう? まぁ、ウィータも、僕の奥さんの好みわかっているだろうから、文句は言わないか」

 さすがセンさん。師匠の好みをしっかりご存知。
 ただ、ちょっと。胸を痛めたのは、師匠もディーバさんの好みを知っていて、きっとディーバさんもセンさんみたく、師匠の好きなものたくさん知っているんだろうなって事実。
 訪問者さんたちの中でも特に古い付き合い――守護精霊様によると、幼少期からのお付き合いらしいですもんね。

「センさん、ディーバさん。ししょーと、ずっと付き合いあるですね」
「そうだね。ディーバと僕が出会ったのも、子どものころだったから。さすがに僕とウィータとの付き合いの方が、長いけれど」

 いいなぁ。センさんもディーバさんも、師匠の色んな初めてを知っている。知っているどころか、一緒に体験してきたことも多いのでしょう。
 落ちそうになった溜め息は、お茶で押し込めました。ぐいっと煽ると、ちょっと舌がぴりっとしました。あつい。

「アニム、なにかあったのかい?」
「へ? いっいえ、お菓子、おいしくできると、いいな、思って」
「僕にも言えないこと? 僕は、ウィータとアニムの一番の理解者なつもりだけど。アニム個人の気持ちに関しては、ラスターに百歩譲るとして」

 うっ。センさんずるいです。さぁ、なんでもこいと言わんばかりな語調で問いかけられ。手持ち無沙汰に、花瓶から花を一本抜いて、くるくると回してしまいました。
 ひやっとした空間に広がっていく、心地よい空気。美しくお茶を口にしながらも、私から視線を外さないセンさんに、参りましたと頭が下がりました。

「センさん、どーして、私、ししょーのことで、悩んでる、わかるですか」
「アニムが自分のことで落ち込んでいる時は切替え早いし、前向きに『行き詰まったら、助けて、くださいです!』って笑ってくれるからね。もやっとしているのは、大抵ウィータがらみだから」
「かえす、ことばも、ありませぬ」

 わかり易すぎるぜ自分、と恥ずかしくなりつつ。センさんが私を見てくれてるのが嬉しくて、頬が緩んでいきます。センさんはウーヌスさんと似ています。さり気なく、手を差し伸べてくださるんですよね。
 私の変な言葉遣いに笑っているセンさん。穏やかな笑い声に、もやもやが晴れていくような気がしました。

「内緒、ですけど。今日のお菓子、私の世界では、感謝の気持ちと……異性への告白する、行事のお菓子、なんです。私、ちゃんとした恋心で、あげるの初めて、なんです」
「ウィータが聞いたら、全身震わせて歓喜の雄たけびをあげそうだね」

 しっ師匠がオーバーリアクションとはいえ、いくらなんでもそこまでの奇行はしないと思います。そういうことは言わんでよろしい、とは怒られそう。あくまでも照れ隠しに、ですけれど。
 いかんです。想像上の師匠に、にやけてしまいましたよ。今の私が奇妙ですよね。

「ししょー、長生き、です。色んな経験も、豊富。私、初めてばっかりだけど、ししょーは、違うんだなって。あっ! 年齢差、ありすぎて、仕方ないは、納得してるですよ? でも……やっぱり、センさんやディーバさんみたく、ししょー、昔から知ってる人や、お二人みたく、同じ時間を、過ごしてきたの、羨ましいなぁ、思っちゃって。そーいうのって、ししょーとっては、重いよなぁって」

 言い訳がましいのがわかっているので、早口で捲くし立てるような口調になってしまいました。一気に乾いていく口内に、お茶を流し込みます。瞬く間に湿りがなくなっていくので、全然効果はありません。
 センさんは、一瞬だけ目を見開きました。が、すぐにふんわりと微笑みます。どこか嬉しそうに見えるのは、気のせいでしょうか。

「センさん? やっぱり、私、こどもっぽい?」
「ううん。ウィータは重いって思わないだろうし、むしろウィータの気持ちの重さに比べたら、アニムのそのやきもちは爪の先ほどじゃないかな」
「うっ。やきもち、ですかね」

 はっきりと言葉にされ、熱があがっていきます。いえね、羨ましいっていうレベルで、決して嫉妬というつもりじゃなかったのです。同じでしょと突っ込まれると、返す言葉もありませんが。
 ですが、師匠の想いの方が重いというのには、首を傾げてしまいます。だって、明らかに私の好き度の方が高いんですもん。
 実際に、うーんと唸ってしまいました。センさんは、私の奇声には反応せず、ただ困ったように眉を垂らしました。

「僕からしたら、アニムと暮らすようになってからのウィータは、初めて見る彼ばかりで羨ましいのだけれどね。僕らが何百年ともに生きてきても出会えなかったウィータを引き出したのも、見せてくれるのも。全部、アニム効果だと断言できるよ?」

 アニム効果?! とんでもなく嬉しいお言葉を頂戴いたしましたよ!
 他のだれでもなく。師匠の近くにいらっしゃるセンさんの励ましに、蕩けていきます。センさんは優しくて紳士さんだけど、無責任なお世辞や付け焼刃な励ましを口にされる方じゃありません。
 どうしよう。幸せすぎて、苦しい。

「センさんが、断言してくれる。一番、心強い、です。ありがと、ですよ!」
「よかった。僕も嬉しいよ、ありがとう。それにね、ウィータはアニムが傍にいるだけで、全てを新鮮に……別世界に受け止めてると思うしね」

 二人してほんわかと笑いあいます。師匠大好き同盟です。
 そうだといいな。そうですよね。私と師匠で考えればいいですよね。
 やっぱり、やきもちは妬いちゃうと思うのです。でも、師匠が妬いてくれるのは、私は嬉しいから。師匠もちょっとでも同じ気持ちになる時があると嬉しいなと、どどんと構えておきましょう。
 そっと。握っている花に唇を添えました。ほのかに甘い香りが鼻腔をくすぐり、また幸せに浸ってしまいます。

「……おい、アニム。それはどういう意思表示だ」
「あれ、ウィータも休憩かい? アニムが僕のために淹れてくれたお茶だけど、まだ淹れたてだよ」
「オレには毎日淹れてくれてるからな」

 師匠が現れた。アニムは混乱している。
 まさか今の会話聞かれてませんよね?! 師匠には前科がありますからね。意思表示云々はさっぱり検討がつきませんので、じっと師匠を見つめます。下手に口は開けないです。というか、センさんも妙に『僕のために』という部分にアクセントを置かないでくださいませ。
 お花さんを花瓶に戻し、師匠のカップも持ってきたのは良いのですが。

「センはどうでもいい。で、アニムはなんで、ラスターが贈ってきた花になんぞ、口づけしてたんだよ」
「え、そこ? 特に意味なんて、ないですよ。お花、良い香り、思って」
「あっそ」

 師匠は流したような口振りです。自分から聞いておいてなんですかい。
 とはいえ、私の隣に腰掛けたのに、頬杖をついてそっぽを向いているのですよ。これは絶対に流してるんじゃなくって、拗ねてるんだ。私の考えを裏付けるように、センさんが突っ伏して笑っていますもん。

「ししょーも、かぐ?」

 ちょいちょいっと。再び手にした花を、師匠のほっぺに当てたのですが。師匠はけだるそうに花を奪いました。うっ。花と師匠は悔しいくらい似合ってます。素朴な花でも、師匠が手にしているだけで、華やかになりますね。花だけに。
 ぼけらと間抜けな顔をしている私に呆れたのか。師匠が頬をぺちぺちを叩いてきました。そして、ぷにっと親指の腹が唇に触れます。

「あほアニム。オレはこっちが欲しいんだよ」
「ちょっ! ししょー、待って! センさん、いるですよ!」

 眠たそうな瞼だったのに。すっとあがった目じりに、全身の血が沸きあがりますよ!
 普通の口づけでも、未だに心臓ばくばくなのに、センさんの目の前なんて無理すぎる! ぐぎぎと、可愛くない様子で師匠の肩を押し戻してやるんだから。
 必死の抵抗あってか、センさんの爆笑が響き渡りました。やった! これで回避!
 と心の中、拳を握ったのも束の間。

「僕はまだ恋天使のハンマーに潰されたくないからね。可愛い奥さんが、待っているし。また子猫たちが戻ってくるだろうおやつの時間になったら、戻ってくるよ」
「センさん?!」

 師匠を止めてくれると思ったのに。センさんは涙を拭いながら、颯爽と立ち去ってしまいました。てか、また恋天使のハンマー?! ラスターさんも言ってたけど、なぜ天使にハンマー?!
 いえね。私が不安をたれたから、気を使ってくださったのかもですが。この場合、師匠をからかって、止めて欲しい気持ちもなきにしもあらず。
 自分でもどっちなんだと突っ込みたくなる葛藤が生まれたのも束の間。余所見をした隙、師匠に手を取られてしまいました。

「アニムはもっと物事の意味を考えろ。寝室に飾らなかっただけましだが、さすがにあんな顔で、他の男から贈られたもんに口づけしてるの目撃したら、心臓がつぶれる」
「んっ」

 花に口づけたのと鏡映し。ふんわりと唇を寄せられました。けれど、それが余計に鼓動を早め。ぎゅっと。師匠の背中を掴むのがやっとな、私でした。



― 後編へ続く ―




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