引き篭り魔法使いが術を失敗して、巻き込まれてしまいました。

  

13.引き篭り師弟と、謎の傀儡(かいらい)3


「ししょー、そろそろ、帰ろう」
「あぁ。すっかり暗くなっちまったな。フィーネ、フィーニス、近くいるかー?」

 師匠が大きな声で二人を呼ぶと、少し掠れ気味に「んにゃー!」という返事が聞こえてきました。
 名残惜しいですが、近いうちにまた来ましょう。星見もですが、今度はお弁当を持ってピクニックというのも捨てがたいですね! 腕によりをかけて作ります! 出来れば訪問者の皆さんもご一緒だと、より賑やかで楽しそうです。そのまま宴会になる確率が高いですけど、ある意味お花見みたいで心が躍ります。

「あにみゅー、ほら!」
「これ、あにむちゃにあげましゅ!」

 満面の笑みで帰ってきたフィーニスとフィーネが抱えていたのは、光る瓶でした。と言っても、可愛い掌サイズの丸い瓶自体が光っているのではなく、中身の花びらや花が煌いているようです。
 二人の後ろにある川を見れば、そちらも淡い光を浮かべていました。空と師匠ばかり見ていて気がつきませんでした。川と滝を背にしていたからと言い訳しておきましょう。心の中で。

「ありがとう、フィーニスにフィーネ! とっても綺麗、だね。それに、甘くてほっこりな香り」 

 瓶の中には、七色の彩を放っている花びらと花だけが詰められていました。川を形作っているぷるぷるの水ときらきら光っている粒子も、一緒に入っています。気泡も飾りになって、水中みたいです。
 瓶の底を覗くと、魔法陣が描かれていました。フィーネとフィーニスが、それぞれ使う魔法陣のようです。もしかして、どっちが集めた瓶かわかるように、目印をつけたのでしょうか。競い合って集めている二人の姿が思い浮かんで、くすぐったくなりました。

「絶対、あにみゅは、こーいうの好きだと思ったのじゃ!」
「七色のお花しゃんはね、あにむちゃみたく優しい匂いと魔法が、ぎゅうっ! でしゅの!」
「ほぅ。よく七色の花だけ掬えたもんだ。二人とも頑張ったんだな」

 フィーニスは、ぱたぱたと前足を振ってはにかんでいます。フィーネは前足をあわせて、丸い体ごと縮めました。ちっちゃい体が、さらに愛らしいサイズです。
 可愛いやら嬉しいやらでパンクしそうな、私の心。二人を抱きしめたいのは山々ですが、貰った瓶も大切です。考えあぐねた結果、二人の額にキスを送りました。二人の方が、優しくて甘くて素敵な匂いがします。
 
「今日、ふたりに、いっぱい嬉しい、もらってばかり。お礼、お菓子作りたいけど、希望ある?」

 首を傾げて質問すれば、フィーネとフィーニスの顔がぱぁっと輝きました。垂れていた耳も、せわしなく動き出します。フィーニスの左右交互も、フィーネの同時も、どっちも愛々しいです!
 なのに。二人の耳を見た師匠が小さく噴出したので、肘で横っ腹を攻撃しておきました。水差しは許しません! 幸い、くるくる回って思案中の二人には、気付かれなかったようです。ほっ。

「わーい! ふぃーね、滝の花びらちゅかったお菓子、たべたいでしゅー! 生クリームたっぶりのケーキがいいにょー!」
「ふぃーにすは、んーと、んーと……そうじゃ! ちょこれーとのクッキー食べたいぞ! お花の形だと、嬉しいのぞ!」
「りょーかい!」

 確かフィーネとフィーニスが教えてくれた情報では、ここの花びらは食べられるとのことでしたね。
 離れた滝口でまだ花びらを瓶に詰めているウーヌスさん、まだ瓶持ってるでしょうか。足を踏み出した私の前に差し出されたのは、薄い桃色の花びらでした。いつの間に取ってきたのか。師匠が摘んでいる花びらを、唇に触れさせてきます。

「ほれ。口、あけろよ」
「自分で、食べれる、ですよ」
「瓶、持ってるだろが」

 師匠のおっしゃる通りなんですけど。フィーネとフィーニスが見ている前で、あーんはちょっとどころか大分恥ずかしいです。
 結局、痺れを切らした師匠に、無理矢理突っ込まれてしまいましたけど。でも、これは!

「ぶるって、美味しい! ほどよい、甘味。蜂蜜とか、砂糖菓子、みたい」
「でしゅのー! でも、べとってしないかりゃ、ふぃーねとふぃーにす、だいしゅきなのでし」
「家に運んだ瓶、ウーヌスが使わない分を譲って貰え。二・三瓶はあまるだろうからさ。それで菓子、作ってやれよ」

 もしかして、師匠ってば最初からソノつもりだったんでしょうか。滝に寄ってくれたのも、帰り際、フィーネが滝のこと言ってたから?
 じっと師匠を見つめますが、いつも通り「んだよ」と身を引かれただけでした。弟子として師匠を、大分わかってきたつもりです。間違いないとは思いますが、尋ねたところで素直に教えてくれる可能性は低いですよね。

「ありがと! あとで、ウーヌスさん、お願い、してみる!」

 ここからお願いするには、ちょっと距離がありますからね。ウーヌスさんの気を散らすのも申し訳ないですので、作業が落ち着いた頃合を狙って声をかけてみましょう。
 手に持った瓶をフィーネとフィーニスに翳すと、ぐみゃりと姿を変えました。二人の方から見た私も同じようで、愉快そうな笑い声が耳をくすぐってきます。自分の目に近づけて大きく開くと、フィーネとフィーニスの尻尾がぴんと伸びました。ふふ、驚いてる。
 ややあって、二人が鼻をくっつけて、舌を伸ばしてきました。べーって、可愛い! フィーニスが目尻を引っ張ったのを、フィーネも真似ています。

「こらー!」
「ふみゃにゃー!」

 両腕を突き上げて怒った振りをすると、二人は声を揃えて逃げていきました。ぴたっと止まって振り返ってきたので、もう一度同じようにすると、けたけたと笑って川の方に隠れてしまいました。興奮した様子でくるくる旋回しているので、しばらくは戻ってこないかもですね。
 瓶はポケットにしまっておきましょう。ちょっと重いけど、戻ってきた二人を捕まえたいので、我慢です。……胸に入れたら、見栄えが良くなるかな。
 ほくほく和んでいると、ふいに後ろから髪を梳かれました。

「なぁ、アニム」
「なーに、ししょー」

 手つきとお揃いに、静かな調子で名を呼ばれました。すっかり下りた夜の帳にも似た、師匠の声。心地よい響きなはずなのに、上手く呼吸が出来なくなってしまいます。
 フィーネやフィーニスとじゃれていた時の温度差で、ひゅっと喉が鳴りました。心なしか、風も冷たい気がします。

「お前さ。正直なところ、元の世界に……戻りたいと思ってるか?」
「え?」

 思いも寄らない質問でした。いえ、自分を棚にあげてだとは思うのですが、師匠から直接的に聞かれるなんて、本当に予想外なんです。
 だって、何故このタイミングなんでしょう。花畑で私が消えたら寂しいかとぼやいた際は、根本的な問題には言及してこなかったのに。
 あっけに取られている私をおいて、師匠は躊躇いがちに口を開きます。

「アニムが家族を大切に思ってるのは知ってる。オレが把握してない未練も、あるかもしれねぇ。けど、周りを考えてじゃなくて、純粋にお前だけの気持ちで考えたとしたら、さ。深く悩まなくていい。今の、直感で、いいんだ」

 軽い口調とは反対。師匠の視線は、私を射抜いてきます。身を焦がされるような、とても強くて熱い眼差し。けれど、一欠けらの揺らぎも、見え隠れしているような。
 家族のことも、世界の壁も。何も考えない、私の純粋な想い。今日、改めて実感した師匠への想い。そんなの、決まってる。私は、師匠が好き。大好き。
 ただ、願っていいのなら、師匠の傍に――。

「わ、私はっ」

 振り絞って出した声は、かさついていました。散々、好きや大好きは口にしてきたのに。
 ぎゅっと。小刻みに震えている手を握ります。ひどく汗ばんでいる掌は、何の効力もはっきしません。それならばと、指を絡めますが大差ありませんでした。
 師匠がどう想ってるのかなんて、考える余裕は皆無です。今、言わなくてどうすると、俯いている顔と心を叱咤します。

「ししょー、私は――」
「あー、もう! うっせぇなぁ!」

 えー!? 自分から言っておいて、なんたる仕打ちでしょう!! コントさながらの流れに、白目をむいてしまいそうです。っていうか、リアルに昇天しかかってるんですけど!
 ぶっ倒れそうな私におかまいなし。師匠は思い切り眉間に皺を寄せて、頭を振っています。頭痛でもしているのか、額を押さえて奥歯を噛み締めているじゃないですか。
 呆然と立ち尽くしていると、フィーネとフィーニスがすいっと戻ってきました。

「ありゅじ? ふぃーにすたち、うるさかったのぞ?」
「ありゅじちゃま、ごめんなしゃい」

 しょんぼりと全身で項垂れているフィーニスとフィーネ。自分の尻尾を握って、か細く鳴き声をあげちゃいましたよ。あぁ、抱きしめてあげたいけど、体はぴくりとも動きません。
 師匠は、バツが悪そうに二人の頭を撫でました。私は放置です。

「悪い、悪い。お前らじゃねぇよ。外からラスターの魔力が結界に叩きつけられてて、って、まじ黙れ、ラスター。もう、勝手に入って来い」

 って! 魔法通信ですか。ラスターさんからの通信が入ったデスか。
 へなへなと地面に雪崩落ちていく体。無気力状態です。燃え尽きたぜ。今なら灰になってお空に舞い上がっていけます。ここがベッドなら、爆睡モードですよ。
 崩れ落ちていく最中、視界の端に映った師匠が、あちゃーと言わんばかりに天を仰いでいました。掌で顔を覆っているので、表情はわかりませんでしたけど。
 っていうか、私の台詞ですよ。意を決して告げようとしたのに。ほんと、泣きたい。
 ちなみにセンさんやラスターさんなど、旧友さんたちは自由に結界に出入りできるんです。もちろん、師匠にわかるようにです。

「あー、アニム。わざとじゃ――」
「ちょっと! ウィータ!!」

 師匠が私の前に膝をついた瞬間、魔法映像が現れました。すごい音量です。
 放心状態の私はあまりダメージを受けませんでした。が、師匠は耳を塞いで俯いてしまいました。耳元に近かったので、相当なダメージのようです。

「にゃんじゃ! 耳、きーんって、痛いのぞ!」
「うるちゃいのでしゅぅ。魔法、びびびって変な流れにゃのー」

 フィーネとフィーニスも、耳を思い切り押さえて悶えています。可哀想に。手招きすると、すいっと首に抱きついてきた二人。背中を撫でると、涙目でさらに擦り寄ってきました。両手を自由にしておいて良かったです。
 魔法映像には真紅の髪と瞳をした、美人さんが映っています。でも、般若顔負けの表情をしてらっしゃいます。

「ウィータってば、ずっと気がついてたんでしょっ! 無視こいてるんじゃないわよ!」
「ラスターさん、こんばんは、デス」

 師匠の代わりに、ご挨拶申し上げました。私、弟子っぽい。
 青筋を立てて怒鳴っていたラスターさんの表情が、和らぎます。魔法映像に張り付いて、微笑んでくださいました。周りに薔薇が咲いたと錯覚するほど、美麗な笑顔です。つい、見とれてしまいました。
 ぽけっと口をあけた私の頭を、師匠が変な顔で掴んできました。よっぽど愉快な顔だったんですね。すみません。ぎゅっと下唇をはんで、間抜け面を引き締めます。

「アニムちゃん! 熱は下がったのね? 心配したんだからー! でも、地面に座り込んじゃったりして、まだ調子悪いんじゃないの?」
「その節は、ご心配、おかけしました。もう、大丈夫、です」

 早口で捲くし立てるラスターさんに、深々と頭を下げます。フィーネとフィーニスは、てててっと肩に移動しました。
 たった今、精神的負傷を追ったばかりなのは、内緒にしておくです。

「って、アニムちゃんも気にかかるけど、そうじゃなくって!」

 ほっと肩をおろしたラスターさんですが、再び、汗を飛ばしながら魔法映像を叩き出しました。物質でないはずの魔法映像が、跳ねている気がするほど、切羽詰まっていらっしゃいます。
 さすがの剣幕に師匠も可笑しいと思ったのでしょう。面倒臭そうに首筋をかきながらも、溜め息混じりに向き直りました。ちゃんと私の手も引いて立ち上がらせてくれたのは、さすがです。

「んだよ。お前こそ、今日来るなんて聞いてねぇぞ」
「悠長なこと言ってないでよ! 侵入者がいるわよ? あんた、なんの気配も察してないの?!」

 ラスターさんの一言に、緊張が走りました。離れた場所で屈んでいたウーヌスさんも、すくりと立ち上がり、こちらを伺っています。
 ラスターさんが狼狽(ろうばい)しているという事実が、単なる侵入者でないのを示しています。それでなくても、師匠が本気で気がついてなかったとしたら、それだけでも大事なのは、私にもわかります。
 師匠が驚愕のあまり、目を見張っています。
 何かを見つけたのか。ラスターさんは、水晶の森の中を駆け出しました。ハイヒールと水晶がぶつかる音は聞こえません。魔法でもかけているのでしょうか。動揺のあまり、どうでもいいことにばかり思考がいってしまいます。
 
「まさかっ!」
「そのまさかよ! 間違いなく、見たのよ。水晶の森側の結界から、禍々しい傀儡(かいらい)が侵入していくのを! 今、後を追っているわ!」

 傀儡(かいらい)。
 式神本を読んだ時、目にしたような気がします。この世界でいう式神とは、創られたモノとはいえ魂となる核か本来の意味での魂を持ち、『肉体』を与えられた存在。傀儡とは、魂を持たない『単なる物質を器』とした操り人形。らしいです。独立した意思の有無もあったでしょうか。
 詳しい知識はありませんが、確か大体こんな感じなはずです。
 
「くそっ! オレとしたことが、こっちに集中しすぎてたとはいえ、気がつかなかったなんて! いや、それより、侵入者を捕らえるほうが先か」
「あんたねぇ、何してたか知らないけれど。ともかく、早く来なさい! 水晶の森の近くよ!」
「わかった。すぐ行く。しかし、どうやって侵入してきやがったんだよ。気配もしやしねぇ」

 師匠は苦々しく吐き捨てながらも、手際よく魔法杖を練り上げていきます。
 眩い光を放って姿を現した魔法杖。師匠は力強く振り下ろすと、結界全体が低い唸りを鳴らしました。木霊していく音は、おなかの底に響いてきます。
 さらに、私たちが立っている場所にも魔法陣を描きます。花畑一帯に広がっていった魔法陣は燦然(さんぜん)と輝くと、地面に染みていくように消えました。

「結界にょ?」
「お花畑のまわりだけ、ちゅよくなったのでしゅ」

 フィーニスとフィーネが、ふんふん鼻を動かしました。二人は匂いで魔法がわかるんでしたよね。師匠は、緊張をそのままに頷きました。
 結界を越えてきたのに、師匠が存在を捉えられない侵入者。背中を滝汗が流れていきます。

「水晶の森から侵入してきたなら、お前らはここにいた方が安全だろう。オレが迎えにくるまでは、何が見えてもここから動くなよ」
「ししょーも、危険、いうこと?」

 もちろん、戦えないどころか他者の魔法に弱い私が傍にいたら、師匠も満足に戦えないのは承知しています。けれど、アラケルさんと魔法戦をした時の師匠は、もっと余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)でした。命をかけてはいない戦いだったとはいえ。
 だから、何が見えてもが指すモノが激しい魔法戦なら、師匠も無傷ではすまないかもしれません。今日一日の幸せが死亡フラグだったなんて、嫌です!
 って、私、そんな軽い問題ではないですよ。あぁ、突然襲ってきた脅威(きょうい)で、頭が回らない!

「オレは大丈夫だ。ただ、どんな手法を用いたにせよ。オレに悟られずに結界内に潜り込んできたってことは、相当は使い手なはずだ。そんな奴の前に、お前を連れて行くわけにはいかねぇからな。魔法的にも……弟子的にも」

 柔らかい笑みで、何度も頬を撫でられます。最後に、むにっと頬を引っ張られました。「おっ、やわらけぇな」とからかってくる師匠の口角は、意地悪げに上がっています。
 うん。少し冷静になってきました。師匠を信じて、私は足を引っ張らないように、考えるのが私の仕事。私がやるべきなのは、師匠を引き止めることではありませんね。
 気を取り直して、力いっぱい頷きます。師匠は、くしゃっと髪を撫でてくれました。

「いい子だ。ウーヌス、アニムたちを頼んだぞ。異変があれば、すぐ知らせてくれ」
「かしこまりました」
「ふぃーにすたちも、がんばるのじゃ!」

 右腕を胸の前に翳したウーヌスさん。フィーニスは右前足を掲げ、フィーネは私に寄り添ってくれています。
 絡めたままの指は、白く血の気をなくしています。これほど身の危険を感じた機会はありません。自分が平和な枠の中で守られていたのだと、実感しました。そうです。私もしっかりしないと。せめて、邪魔にはならないように気をしっかりと持っていないとです。
 不安な様子を見せないよう、ぐっと顔をあげます。
 ぷにっと。師匠の唇が、私のそこに触れてきました。触れるより、ほんのわずかにだけ踏み込んだ感触。

「ウィータ! あんた、あたしが見てるの知ってての所業?!」
「うっせぇな。やる気の補充だよ、単なる」

 何故か歯軋りしたラスターさんに、ひらひら手を振った師匠。何故ってこともないですね。こんな緊迫した空気の中、恋仲周知ならともかく、師弟が唇を触れ合わせていたらイラつきもしますよね。当人にとったら挨拶程度とはいえ。
 師匠をおずっと伺うと、歯を見せて笑ってくれました。

「あんた、後で必ずしめてやるわ。嫌がらせしてやるんだから!」
「有言実行する力があるんなら、いつでも受けてたつぜ?」

 軽口をききながらも、師匠はしっかりと転移魔法の準備をしています。
 お二人のやり取りが、硬くなっていた空気を解してくださいましたね。フィーネとフィーニスは、相変わらず鼻に皺を寄せて物凄く嫌そうな顔のままですけど。可愛いお顔がもったいない。でも、そんな二人もキュートですけどね。

「ししょー、気をつけて! ししょーなら、ぱぱっと、だよね!」

 転移魔法に包まれた師匠を、可能な限り明るい声でお見送りしましょう。
 ぐっと親指を立てると、師匠は魔法杖を握った拳を突き出してくれました。不適に笑ってくれた師匠のおかげで、気持ち悪く跳ねていた鼓動が、落ち着きを取り戻していきました。大丈夫。師匠なら、すぐ解決して戻ってきてくれる。

「おぅ、任せとけ! 腹も減ってきたし、早く晩飯食えるよう、張り切ってくるぜ」

 魔法の名残が消えると、静寂だけが花畑を支配していきました。



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