引き篭り魔法使いが術を失敗して、巻き込まれてしまいました。

  

12.引き篭り師弟と、南の森の花畑6


「え、あの、ししょー?」

 じりじりと無言で迫ってくる師匠。怒られる覚悟はありましたが、どうして笑顔で青筋立てていらっしゃるんですか?!
 師匠のとてつもない迫力に怯えて、思わず立ち上がって逃げの姿勢になってしまいます。追うように伸ばされた師匠の腕。
 膝の上のフィーネとフィーニスを抱えて、師匠の方に突き出します。師匠が反射的に二人を受け取っている隙に立ち上がって、後ずさりで逃げるんだ。

「オレがはっきり言葉にしねぇから、鈍いお前に察しろってのも無理な話しだとは思う。けどよ、それでもかなーり気持ちは漏れてる自覚はあるんだが……。それとも、吹雪の中で聞いた声、意味不明なこと言ってたってのは嘘で、ほんとは何かしら思いつめるような材料与えられたのかよ」
「鈍くないよ! ししょー、弟子の私、大切思ってくれてる、わかってる」
「……わかってねぇじゃないか」

 とんでもないです、師匠。私だって、師匠が私を憎からずは思ってくれてると承知はしていますよ? ただ、それが『アニムさん』ありきなのかを悩んでいるだけで。
 それもね、師匠を大好きで、全部独占したいっていうとんでもない嫉妬から。だから、師匠に嫌われたくなくて、私も気持ちを伝えるのに二の足を踏んでしまうんです。師匠は、私がどれだけ貴方を好きなのか、想像もつかないのでしょうね。

「吹雪きの声、ベッド中で言った、全部」
「嘘じゃねぇーだろうな」

 吹雪の中で頭に響いてきた声に関しては、看病してもらう合間にお伝えしたとおりです。今となっては、師匠が私に伝えている『術の失敗』と、師匠が思うところの失敗は違うのだと理解していますが。
 謎の声がどちらを差しているかは不明です。けれど、元から私をこの世界に召喚するのを目的としていた師匠がいう失敗。師匠のことだから、それはもっと穏便に話を進めるつもりだった、という意味かもしれないと想像はつきます。一年以上弟子をやってますし、好きな人を信じてもいますもん。

「嘘ない。だって、ししょー、私ベッド押し倒して、無理矢理――」
「ちょっと待て、おい。その言い方、色々やばいだろうが」


 迫ってくる師匠が極悪人面を掌に隠したので、若干ではありますが恐怖が和らぎました。とはいえ、私、変なこと言いませんでしたよね。熱でぼうっとしていたけれどご飯を作ろうとしていた私。そんな私をベッドに押し倒して寝かそうとしつつ、変な声について詰問してきたんですもん。
 と、言い訳したかったのですが。再び顔を上げた師匠に気圧されて、声になりませんでした。ひたすら、ぶんぶんと頭を振ってみせますが、師匠は歩みを止めません。

「いたっ」
「アニム、観念して捕まれ」
「捕まったら最後。地獄へのご招待」

 じりじりと追い詰められ、ついに、一本ぽつんと立っている樹に背中がぶつかってしまいました。どうせ追い詰められるなら、もっと色っぽい状況が良かったです!
 ずんずんと躊躇いなく近づいてくる師匠。あと一歩というところまで迫られてしまいました。いかんです。樹の後ろに逃げ込まなければ。

「遅えよ」
「神様、お許しを!」
「あほアニム。こっち向け」

 この世界では『お代官様』に相当する言葉がないのが残念です。あっ、『宰相様』なのでしょうか。
 じゃなくて。両側を師匠の腕に挟まれ、身動きとれません。これが世に言う、壁ドンっていう奴ですね。師匠は樹に両手をついているので、樹ドンでしょうか。
 顔を寄せてくる師匠に負けじと、私も胸に両手をついて対抗します。ですが、もちろん、力で適うはずもなく。一歩ずつ、師匠との距離は縮まっていきます。

「ししょー、近いの、いや。離れて!」
「さっきから地味に傷つけてくるな。あほアニム」

 急に弱くなった語気。びっくりして見開いた目に映ったのは、ばつが悪そうに頭を?いている師匠でした。「いや、その、忘れろ」とぶつぶつ呟きながら、視線を逸らされました。
 いつものやり取りなはずなのに、どうしてか、師匠は傷ついている。
 ……違いますよね。優しい師匠を傷つけているのは、他のだれでもなく私です。私の不用意な発言の数々が、師匠を悲しませている。
 悪いのは私なのに、じわりと目が熱くなっていきます。最近の涙腺さんは、さぼり気味です。もうちょっと、きゅっと締まっていて欲しいです。

「ごめんなさい、です。私、ししょー、傷つけたかった、わけじゃ、ないです。ほんと、です。ただ、最近、私、とっても幸せ。だから、逆に、不安なる、いうか。私、ここいて、いいのかなって。何言ってるんだろ、私。……考え足らず、発言ばっかり、ごめんなさい」
「あー今のはな。あれだ。いつもの軽口だっての。オレは、お前が、傍にいるの嫌じゃねぇつーか――泣くなって! オレ、お前のはっきり言うところ、嫌いじゃねぇし」

 突っ張っていた手をだらんと下に落とすと、間髪入れずに師匠が握ってくれました。少し汗ばんでいるのは、私なのか師匠なのか。
 おずおずと顔をあげると、目元にキスの嵐がふってきました。涙をきゅっと吸われて、胸が苦しくなります。嫌いじゃないという言葉に、余計涙が落ちていきます。嬉しい。師匠が精一杯譲歩というか、頑張ってくれているのがわかって、下唇をきゅっと噛みます。
 この嬉しさを師匠に返したい。どうしたらいいのか、一生懸命に考えます。

「ししょー、口づけ、してもいい?」
「はっ?」

 自分でも意味不明な言葉が出てしまいました。目の前の師匠も、瞬きを繰り返しています。本当に呆けているようです。確かに、今までの会話を丸無視な流れですよね。
 師匠の返事がないのをいいことに、師匠の頬に空いた方の手を添えて、つま先に力を入れました。

「っん」
「――っ!」

 大人なキスなど知らない私は、唇の押し付けしか出来ません。師匠にしてもらうのを見様見真似です。とりあえず、ぐっと師匠の唇をはんで、きゅっと吸って。すぐ離れてしまったそこを、また角度を変えて触れさせて……とにかく、必死で色々試してみます。
 そうこうしているうちに、師匠の腕にぎゅっと背中を掴まれました。強さに心地よさを感じていると、ぬるっとしたものが口内にもぐりこんできました。

「ふぁっ、んやっ」

 ずっと欲しかった感触。だけど、歯列をなぞられ、体の芯が痺れます。ちゅくっと耳に入ってくる粘着質で足が震えて、師匠の背中を掴みました。それでも、優しく絡んでくる舌が気持ちよくて、ぎゅっと下から肩を握って、なんとか立っていようと頑張ります。
 そんな私が可笑しかったのか。一瞬唇が離れた隙に、ふっと師匠の息が漏れました。でも、腕はきちんと私の体を支えてくれています。それが余計に悔しくて。私も頑張って、再び侵入してきたモノに自分のを触れさせました。

「ふぃ」

 こくんと。喉の奥を通過していった唾液。飲みきれなかった分と離れる際にひいた糸が口の端を垂れていきます。
 とろんと全身蕩けてしまって動けない私の口を、師匠が袖で拭ってくれました。それさえも心地よくて、力が抜けていきます。
 すっと、師匠の背中を滑り落ちて言った指。師匠の体が、ぴくりと反応したのがわかりました。我にかえったのでしょうか。
 顔を覗き込もうとすると、思い切り抱きしめられてしまいました。

「お前さ、あんま可愛いことしてくれるなよ」
「ただ、気持ち、伝わればいいな、思って」
「まさか、謝罪のつもりだったとか言いださねぇよな」

 心地よくもたれ掛かっていたのに、体を起こされてしまいました。両側から腕を掴んでくる師匠の瞼は半分以上落ちています。
 師匠ってば、私を一体なんだと思ってるんでしょうか。「ごめんなさい」で、あっあんな深いキス受け入れるわけないじゃないですか! ばか!
 思わず師匠を睨み返すと、一瞬、ひるんだ師匠から力が抜けました。いまだと言わんばかりに、鼻先に口づけます。
 案の定、私の不意打ちに師匠はあっけに取られています。追い討ちで首に腕を回して、耳に唇を寄せると、私史上最も甘ったるい音を作ります。ありったけの想いを込めて。

「ししょー、だいすき」
「んなっ――!」

 真っ赤になった師匠は耳を押さえて、がばっと音を立てて離れました。首まで染め上げて、ぷるぷる体を震わせています。あっ、面白いポーズ。
 ちょっとどころか、だいぶ無理して出した声には、我ながら鳥肌が立ちます。けど、めちゃくちゃ頑張ってみたんですよ? ここはもっと甘い空気になっても良かったじゃないですかね。
 とても切なくなってしまいました。師匠の横をすり抜けて、癒しを求めてフィーネたちの方に駆け出します。

「もう、いいもん」
「つーか、待て!」
「ししょー、追ってこなければ、逃げない!」

 猛ダッシュで逃げますよ。でも、あれです。走りなれていない草原を、全力疾走するもんじゃないですね。
 足元にバッタみたいな虫が見えて避けたまではいいですが、草に足をとられて盛大にすっころんでしまいました。前のめりに。お約束でこけるにしても、もうちょっと可愛い転び方したかったです。天罰でしょうか。

「いたた」
「あにむちゃ! おでこ、まっかでしゅ!」
「なにやっとんのじゃ」

 寝転んだままでいると、駆け寄ってきたフィーネが額を撫でてくれました。後ろから跳ねてきたフィーニスは、思い切り呆れ顔でしたけど。
 肉球の気持ちよさに浸っていると、ふいにフィーネの手が止まりました。不思議に思って目を開くと、こてんと愛らしい様子で首を傾げいてるフィーネがいました。

「あにむちゃが消えりゅって、どういう意味でしゅ?」
「ふぃーにすも、よくわからないのぞ」

 ちょこんと並んで、同じ方向に首をかしげている二人はとても可愛いのですが。純粋な疑問を真っ直ぐぶつけられて、先ほどの師匠に対するのとは別の戸惑いが生まれます。
 フィーネとフィーニスも私が異世界から来たことは知っているはずです。けれど、私が戻るという選択肢を持っているというのあ、理解出来ないのかもしれません。
 師匠も同じ戸惑いを抱いたようです。ちらりと後ろを振り返ると、少し離れた場所で歩みを止めていました。苦虫をつぶしたような顔で固まっていました。
 私と師匠が二の句をつげずにいると、ウーヌスさんが二人の後ろに腰を下ろしました。相変わらず、しゃんと背中が伸びています。

「アニム様は異世界の方です。そのアニム様がこの世界から消えるということは、元の世界に帰る、という意味です」

 ウーヌスさんは淡々とした口調で、わかりやすく説明してくれます。
 体を起こしてフィーネとフィーニスの前に座りなおすと、ウーヌスさんに向けられていたフィーネとフィーニスの視線が、私に戻ってきました。
 二人の頭は、さらに横に倒れていました。

「帰る? いっちょのおうちに住まないってこちょ?」
「ふぃーにす知ってるぞ。別居にゃ。ケンカしたお婿しゃんとお嫁しゃんは、別居するのぞ。でも、それ消えるないぞ」
「フィーネもフィーニスも違います。別々に住むだけであれば、会うことは可能です。しかし、次元を越えて異世界へ戻れば、二度と会えないと言えるでしょう」

 『二度と会えない』という言葉で、フィーネとフィーニスの小さな体が、勢い良く真っ直ぐになりました。直立不動です。普段は垂れている耳も、ぴんと空に向かって伸びています。全身の毛が逆立っています。
 ウーヌスさんは、珍しく満足したように頷きました。

「つまり、未来永劫のお別れです。それは『死』と似ているかもしれませんね」
「え、あの、ウーヌスさん?」
「まぁ、『死』という概念は私たち式神には理解しにくいモノですが。フィーネとフィーニスも絵本などで読んだことがあるでしょう」

 なんだかすごい表現になりだしたのにびっくりして、思わず口を挟んでしまいました。けれど、ウーヌスさんは先を続けます。
 二人の教育係でもあるウーヌスさんは、きっと二人が納得するまで説明を続けるでしょう。いつもは、式神とは何たるものかを説く機会が多いようですが。

「絵本で読んでもらったのぞ。お城の下働きになっちゃ女の子のお母さんは死んで、動かなくなるのぞ。しゃべらなくなるの……ぞ」
「おんにゃの子。おかーしゃまに抱きついて、泣いてたのでしゅ」
「そうですね、その点では『死』とは違いますね。アニム様が元の世界に帰られたら、触ることも出来ません。余韻もなく、まさに体も魂も全て消えてしまうのです。この世界で転生することもありません」

 触れられない。フィーネやフィーニス、それに師匠と言葉を交わしたり触れたりも出来なくなる。わかっていたことなのに。がつんと頭を殴られたような衝撃に襲われました。
 今までは自分の頭の中でだけ考えていた未来を、言葉と言う形で突きつけられたからでしょう。ついさっき感じた師匠のぬくもりも感じなくなる。『アニムさん』を通してどころか、私を見てくれることも、笑いかけてくれることも、怒ってくれることもなくなる。

「私の存在、この世界から、消える」

 改めて『消える』と口にしてみて――ちゃんと文章にしてみて、悪寒が走りました。全身が粟立って、震えが止まりません。自分の両手を見つめます。
 後ろで師匠が息を飲んだのがわかりました。ウーヌスさんの言葉を理解したのか、フィーネとフィーニスは、目を見開いたままゆっくりと私を見上げてきました。かわいそうなくらい、毛が逆立っています。小さな口が、ぱくぱくと上下に動いています。

「私――ぐぇ!」

 顔をあげて花畑へ視線を逸らした次の瞬間、胸に突っ込んできた衝撃でおかしな声が出てしまいました。
 どうやらフィーネとフィーニスが「みゃうぅー!!」と泣き叫びながら飛びついてきたようです。子猫な二人なので、認識していれば大丈夫なのでしょうけど。予想外の衝撃で、視界が揺らいでしまいました。あっ、このまま後頭部をぶつけそう。二人は守らなきゃと無意識に思ったのか。しがみついている二人の背を抱きしめていました。
 痛みを覚悟しましたが、いつまで経っても大きな音は鳴りませんでした。

「ししょー?」
「さっきオレに大好きって言い逃げしやがったのと同じ喉から出たとは思えねぇ声だな」
「あの、ししょー?」
 
 台詞と口調は小ばかにしたようなモノですが。羽交い絞め状態です。思い切り師匠の胸に寄りかかっている姿勢で、腕に閉じ込められています。
 師匠の表情を見ようにも、顔の両側にはフィーネとフィーニスが抱きついてきているし、頭には師匠の顔が埋められているしで全く身動きがとれません。
 ウーヌスさんに視線で助けを求めます。が、「飛んでいったストールを探してきます」と一言残して立ち去ってしまいました。
 ちょっと、待って! まさに説明し逃げ! まぁ、私が説明を押し付けちゃっただけなんですけど。

「やーん! あにむちゃ、いなくなりゅ、なんででしゅのー! 朝、ふぃーね、あにむちゃがお菓子食べすぎだめって言っちゃのに、こっそり持って出かけたの、怒ってりゅでしゅかー?! もうしないでしゅ、ごめんにゃしゃーい!」

 ひとつマフィンが減っていると思ったのは、勘違いじゃなかったんですね。というか、フィーネと同じくらいの大きさがあったと思うんですけど。よく落とさずに持ち出せましたね。フィーニスと協力したのかな。
 言い終わったフィーネは、また泣き出しちゃいました。撫でてあげたいんですけど、がっちり師匠に腕をまわされていて、動かせないんです。

「ごめ。ちが、よ」

 私が悪いのに、泣かせてごめんね。違うよ。師匠だけじゃなくて、二人をも傷つけた至らなさに、涙がこみ上げてきました。一緒になって泣いてしまいます。
 声に出したいのですが、フィーネとフィーニスの手が口を塞いでいて上手くしゃべれません。大粒の涙も両側から口の端に零れてきます。
 なんとか頭を小さく振ると、今度はフィーニスから「しょしたら!」と大きな声があがりました。

「もしかして、ふぃーにすが、昨日の夜、お風呂嫌にゃって逃げたからぞ?! しょん時、あにみゅが描いたレシピ、間違って暖炉に投げ入れちゃったかりゃ、ふぃーにす、嫌いになっちゃのか?!」

 失敗レシピの反省をまとめてた紙だし、ちゃんとフィーニス謝ってくれたので、大丈夫だよって言ったんですけど、まだ気にしてたんですね。
 フィーニス的には白紙を掴んで投げたつもりだったみたいですけど。文字が書かれているってわかった瞬間のフィーニスといったら。「ひょうっ!!」って頬を押さえて固まっちゃってましたね。私は別に気にしなかったのですが、すぐ慌てて火に飛び込もうとしたフィーニスを抑える方に必死でした。

「ししょー、ごめんです。もが。ちょっとだけ、力抜いて」

 私たちの泣き叫びように師匠も驚いたのか、すんなりと腕を動かしてくれました。代わりにお腹に腕が下りてきて、完全に師匠に寄りかかる体勢にされちゃいましたけど。
 フィーネとフィーニスは、泣きすぎでしゃっくりをし始めちゃってます。自由になった手で、二人の背中を何度も撫でます。時々、頭も撫でます。飛び上がった拍子に花冠は脱げてしまったみたいです。
 本当に人間の子どもと一緒です。夢から覚めた時もですが、自分が悪いからって考えちゃうんですね。自分の醜い嫉妬と落ち込みから出た言葉で、二人を傷つけてしまったんですね。自分の浅考に申し訳なくなります。
 でも、今は自分の至らなさにうじうじするより、二人に謝る方が先です。ぐっと唇を噛んで、自分の涙を止めます。
 顔に擦り寄ってくる二人を、一度ぎゅっと頬に押し付けます。顔を上下に動かして私からも擦り寄ると、少し落ち着いたのか、二人ほぼ同時に体を浮かせてくれました。

「フィーネにフィーニス、ごめんね。二人は、全然、悪くないの。ふたり、大好きだよ」
「ほんちょ? あにむちゃ、怒ってないでしゅ?」
「うん。でも、今度からは、こっそりなくて、ちゃんと、言ってね? 食べて大丈夫な量、考えて、ちっちゃく切るから」

 今度から、という部分に力を込めるます。同じ言葉を呟いたフィーネに笑顔が広がって、「あい!」と右手を高々とあげてくれました。
 フィーニスを見ると、そわそわと尻尾を動かしていました。地面の方に向いた尻尾が心を表しています。

「フィーニスも、いっぱい遊んだあと、お風呂、ちゃんと入ろうね。あと、レシピ、気にしてないから」
「わかったのじゃ。今度、レシピ書く時、お手伝いするのぞ」

 二人を傷つけておいて、随分と偉そうな口をきいている気もしますが。私があまりに謝ると逆に二人が気にするのはわかっているので。あとで思い切り甘やかすことで許してもらいましょう。私が嬉しいだけな気もしますけど。
 顔から離れた二人。今度は首にぎゅっと抱きついてきます。まだ背中を撫で始めると、しゃっくりはおさまりました。
 あたたかい温度に、ずっと鼻をすすります。と、後ろから回ってきている手に鼻をつままれてしまいました。

「……アニム。お前、オレの存在を忘れてないだろうな」
「もちろんです。おししょーさま」




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